アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ

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第21回リスト音楽院セミナー 特別レクチャー&公開レッスンおよび受講生コンサート(2018年2月) ざっくりレポート

私は『クラシカロイド』をきっかけに演奏会にも興味を持つようになりました。小さい子がいるのとチケット代の兼ね合いで気になる公演全てには行けないのですが、可能な限り生演奏に触れたいと思っています。先日は「第21回リスト音楽院セミナー」の一般公開プログラムを聴いてきました。開催日から時間が経ってしまいましたが、簡単なレポートを書きます。私は音楽の勉強をしたわけではなく、また楽器の演奏はできませんので、あくまで素人コメントにて失礼します。

なお、「リスト音楽院セミナー」につきましては、札幌コンサートホールKitaraの専用ページを参照願います。

リスト音楽院セミナー | 札幌コンサートホール Kitara

 

【特別レクチャー&公開レッスン】2018/2/22 札幌大谷大学 大谷記念ホール

第21回リスト音楽院セミナー 特別レクチャー&公開レッスン | 札幌コンサートホール Kitara


ピアノはスタンウェイとヤマハが1台ずつ。私は、演奏者の手や身体の動きがよく見える、前列の向かって左よりの席に座りました。ざっと会場を見渡すと、ほとんどが学生さんで、あとは年配のかたが多い印象を受けました。楽譜持参のかたが多くてびっくり。楽譜を持っていないしそもそもピアノが弾けない私の場違い感たるや(苦笑)。埋まっていた座席は三分の一程度で、せっかく良い機会なのにもったいない。私は素人ではありますが、家からも駅からも遠い会場に足を運んだかいがあったと思えた内容でしたよ。来年度も時間が合えばぜひ聴きたいです。

講師はシャーンドル・ファルヴァイさん。入場して「おはようございます」と日本語であいさつした以外は、すべて通訳のかたを介してのお話でした。まずは「レクチャー」、短い休憩を挟んだ後で「公開レッスン」を行う形式で、トータル約2時間半。私は一生懸命メモをとってレポート用紙4枚くらいになったのですが、いかんせん私にはピアノの知識がまるでないので技術面については正しくお伝えできないためここに書くのは控えます。技術面以外で、特に印象に残ったお話の一部をご紹介します。

レクチャーテーマは『ブラームスの魅力~「6つの小品作品118」』。個人的に大好きな曲で、これが聴きたくて参加しました。もちろんレクチャーなので、コンサートのように曲を最初から最後まで続けて演奏することはありません。一部を少し弾いては解説するというスタイルです。先生は作品の魅力や解釈を熱く語ってくださり、ブラームスとその作品118を本当に愛しているのだとお見受けしました。何度もスタッフから「巻き」の指示が入って、最後の方が駆け足になったのが少し残念。時間の制限がなければ、いつまでも聴いていたいお話と演奏でした。

まずは全体的なお話から。最初に伝記・音楽史寄りの説明があり、続けてブラームスの曲についてという流れでした。ブラームスを弾く演奏家は、ブラームスの哲学や考え方を通じて表現したいと考える人が多いとのこと。ブラームス標題音楽を作らなかった人だが、音楽の中にある表題的なものをキャッチできる人にとっては魅力的。作品118は人の一生の感情の振り幅が大きく、凝縮して詰まっている。短い曲の中に、人生の変化がたくさん出てくるのがブラームスの特長。ざっとこんなお話でした。


次に個別の曲について。

  • 118-1。2の序奏的な曲。調整が不安定で始まるのが面白い。情熱的に深く掘り下げる。
  • 118-2。作品118の中では最も有名。何度も出てくるテーマに、重ねる和声で変化を出していく。ニュアンスの変化、繊細な違いを届けられるかがピアニストの腕の見せ所。私(先生)の主観ではあるが、「戻ってこない思い出に思いをはせている。この先も手に入らないもの」を意識。
  • 118-3。要素は中間部にある。「昔の美しい思い出を追っている」イメージ。バラードらしくないと言われるが、(ショパンのバラード1番を一部弾いて)ショパンとの類似性がある。長い音をのばしていく中で、内声がカーブしている影響で長い音が変化するように聞こえる。
  • 118-4。ベートーヴェンの田園シンフォニーのイメージが近く、やわらかいところに踊りの要素が含まれている。古典の変奏の技法を使っていにしえの雰囲気を出している。繊細な音の揺れを大事に。ベートーヴェンのトリルを使うと速くなるので、速くしすぎないように。
  • 118-5は、時間の関係で割愛。もったいない!
  • 118-6。ドラマチックな曲。とても長い息づかいをピアノで表現すること。私(先生)は「キリストを失った母の苦しみ」を想像、最後は息絶えるようなイメージ。中間部は、ブラームスがスタッカートを付けたか付けなかったかを読み解く必要がある。私(先生)は「太鼓が聞こえるような軍隊」をイメージする。

 

もっとたくさんお話はありましたが、私がなんとなくでも掴めたのは大体上記の内容です。私は、専門的なことは深くは理解できずとも、いずれのお話と演奏もうんうんとうなずいて聴いていました。118-2なんて、「この先も手に入らないもの」とお話しして弾いた部分で思わず涙が…私はブラームスほどの強烈な人生経験はないけれど、わかるような気がするんです。ブラームスの気持ちに寄り添えるピアニストのかたが、ここまで深く曲を愛し表現してくださることに感激しました。良いお話をうかがえたことに感謝します。


公開レッスン、お一人目のかたはブラームス:7つの幻想曲作品116より第1、2、3曲」
まずは学生さんが通しで演奏。先生はまず学生さんを褒めてから、細かな指導に入りました。

  • ピアニストの腕はバイオリニストの弓と同じ。
  • 三連符はいつもレガードで。
  • 音を出したら終わりではなく最後まで責任を持つ。最初に残った音を取り上げるように。
  • 小節の終わりで止まらず、次の小節に鎖のようにつながっている。
  • 急がないで、行きたいけど行けないような。
  • 息づかいを意識し、手の動きを情熱的に。
  • 鍵盤とのコンタクトを密に。
  • (ある部分で)最後の瞬間までクレッシェンドして突然止める。

 

公開レッスン、お二人目のかたはショパン:バラード第4番 ヘ短調 作品52」
こちらもまずは通しで演奏。先生はこちらでもまず学生さんを褒めてから、細かな指導に入りました。

  • ペダルで台無しにしているところがある。深すぎるし長く伸ばしすぎる。
  • ワルツのように弾くわけではないけれど、少し地面から足をあげる感じでリズムを踏む。
  • ショパンは即興的な演奏をしていたというので、動きはもう少し自由でいい。
  • バラード2番と親戚関係の部分を意識。
  • 「問いかけ」の部分は、新しいフレーズの始まりでもあるので一度手をあげる。
  • (ある部分で)霧がかかっているところから、霧が晴れるイメージ。


もちろんこれだけではないのですが、一例として上記のようなアドバイスがありました。先生が話しながらお手本で弾いた後、その指示をもとに学生さんが弾くと、最初に通しで弾いたときとはまるで別の曲のような響きになるのです。これには驚きました。いやあすごいです。アドバイスを受けてそれを表現できる学生さん達はもちろん優秀ではありますが、「こうすればもっとよくなる」というのを瞬時につかんだ上で具体的にどうすればよいかを指導できる先生が素晴らしい。こうして若い演奏家を育てる指導者がいてくださることに感謝します。

最後は先生の「次にお目にかかるときまで、皆さん健康に気をつけて」との挨拶でお開き。来年もまたぜひお話をうかがいたいです。そして可能であれば先生の演奏を通しで拝聴したいです。


【受講生コンサート】2018/2/23 札幌コンサートホールkitara 小ホール

第21回リスト音楽院セミナー 受講生コンサート | 札幌コンサートホール Kitara


ピアノはスタンウェイ。基本はピアノを舞台の中央に設置していますが、チェロのかたの出番のときは、その都度ピアノの位置を伴奏用に後方にずらしてチェロのかたのイスを真ん中に設置していました。同日に大ホールで札響の定期演奏会があったのですが、こちらの小ホールも9割方の席が埋まっていた様子。2階席の一番前に、前日お目にかかったシャーンドル・ファルヴァイさんはじめ講師陣のかたが席についておられました。私はやはり1階の前列の向かって左よりの席に座りました。途中に2回の休憩を挟み、2時間半の長丁場でした。

出演者と演目は以下の通りです。

第21回リスト音楽院セミナー 受講生コンサートの出演者が決定しました。 | お知らせ | 札幌コンサートホール Kitara

  1. 越智美月 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴」作品13より第3楽章
  2. 水野優也 シューベルト:アルペッジョーネ・ソナタイ短調D821より第1楽章
  3. 水口真由 リスト:村の居酒屋での踊り(メフィスト・ワルツ第1番)
  4. 清水柚衣 スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番作品53
  5. 横山瑠佳 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番変ロ長調作品84より第1楽章
  6. 伊石昂平 ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番変ホ長調作品107より第1楽章
  7. 中条誠一 ドビュッシー:チェロ・ソナタニ短調
  8. 釣川有紗 ラヴェル:ラ・ヴァルス
  9. 和泉茉莉(ゲスト/第20回リスト音楽院セミナー最優秀受講生) シューマン:交響的練習曲作品13(1852年改訂版)

 

なお、kitaraのサイトで最優秀受講生が発表されています。

第21回リスト音楽院セミナー 最優秀受講生が決定しました。 | お知らせ | 札幌コンサートホール Kitara


演目については、私はお恥ずかしながらベートーヴェンとリスト以外は知らない曲でした。いずれも素人目には難しそうな曲ばかりで、出演者の「人間業とは思えない」手や身体の動きを拝見して圧倒されてしまいました。それでいて奏でる音楽は美しく、表情豊か。正しく楽譜をなぞって音を出すだけではこうはならないんでしょうね。皆さんそれぞれ個性ある演奏で、長丁場にもかかわらず私はまったく飽きなかったです。奏でる音楽に身を委ね、喜怒哀楽の感情を味わう贅沢な時間を過ごせました。最終選考に残るかたはやはり格が違います。皆さんここに至るまで大変な努力を積みかさねてこられたのだとお見受けしました。全員でブダペストへ行って頂きたいくらい。お若いかたばかりなので、伸び代がある分これからのご活躍に期待大です。

本来ならばお一人ずつ感想を書くべきところ申し訳ありません。個人的にチェロの水野優也さんの演奏が強く印象に残りましたので、こちらのみに少し触れたいと思います。アルペッジョーネではなくチェロによる演奏でした。とにかくメロディが流暢で音が美しい!ずっと聴いていたい!演奏はとても動きが多くて、ぱっと見では優雅なメロディと結びつかないくらい。でもこの細やかな動作一つ一つが美しい音を生み出しているのですよね。何と言えばいいのか、もう演奏が素晴らしくてずっと見ていたかったです。気が利いたことが言えず申し訳ないです…。ヴァイオリンやチェロって、時々いやな音がするものだと私は勝手に思っていたのですが、そんな耳に触る音がまったくないのにも驚きました。いや、もしかすると素人が気付かないレベルではあるのかもしれません。もしあったとしても、それをまったく感じさせない演奏はやはり素晴らしい。水野優也さんは既にプロとしてもご活躍されているかたで、私は以前六花亭でのミニコンサートでお目にかかっていました(※記事へのリンクは下の方にあります)。また、今回のリスト音楽院だけでなく、毎年夏に行われるPMFにもご参加されておられるようです。次にお目にかかるときにどんな演奏を聴かせてくださるのか、私はとても楽しみにしています。もちろんそれは水野さんだけでなく、今回の出演者の皆さん全員に言えることです。

生演奏を聴くと、人が身体を使って楽器を演奏するから音楽が聴けるのだという当たり前のことを再認識させられます。演奏者の熱気と感情は演奏の表情に直結するのだと実感しました。また、音だけでなく会場全体の振動や空気まで合わさって「音楽」になるのですね。そこでしか聴けない「音楽」を、生で味わうのはやはり良いものです。最近はPCによるプログラミングで電子音を組み立てるやり方もありますが、人間が楽器を奏でる演奏は無くならないでほしいと思います。私自身は6歳で挫折して以来、楽器はまったくできません。しかし、この先も良い演奏を聴いていきたいので、若い演奏家の皆さんを応援したいです。こういった演奏会はできるだけ聴きに行きたいですし、今年はPMFのプログラムも可能な限り聴くつもりです。優等生的なコメントしかできずもどかしいですが、自分が出来ることは何か?をこれからも考えていきたいと思います。

 

おまけ。関連する過去記事のリンクを貼りますので、よろしければそちらもどうぞ。

nyaon-c.hatenablog.com

「〈ランチタイム ミニコンサート〉2017年10月12日(木) ミニレポート」この時にチェロの水野優也さんの生演奏を初めて拝聴しました。

 

 

nyaon-c.hatenablog.com

 「「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか」浦久俊彦(著) 読みました」ではリストが生きた時代と人物像がわかります。記事の末尾にて「リスト音楽院セミナー」について少し触れています。

 

『クラシカロイド』にブラームスが登場するためには / おすすめの曲(ピアノ小品ほか)についても」でブラームスのピアノ小品(「特別レクチャー&公開レッスン」で登場した作品116、118を含む)について語っています。


長くなりました。最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c