『運命と呼ばないで ベートーヴェン4コマ劇場』[作:NAXOS JAPAN 画:IKE] 読みました
はい、タイトルからおわかりの通り、楽聖ベートーヴェンのお話です。私はタイトルと表紙のカワイイ絵(ベトベンはわかるけど左側の好青年は誰?)にひかれて今年3月頃に購入しました。今でも親子で何度も読み返しています。
Amazonの「なか見!検索」で本の冒頭部分を読むことが出来ます。
NAXOS JAPANさんによる特設サイトは内容充実しています。マンガの一部も公開されていますよ。
naxos.jp
「ボンスポ」は以下のサイトからDLできます。端々まで見逃せない(笑)。
ベートーヴェン4コマ劇場 運命と呼ばないで|書籍|学研 おんがく.net
ちなみに作画のIKEさんはpixivにイラストを投稿されているようです。
www.pixiv.net
いろんな音楽家がいて楽しい&みんなカワイイ。このクオリティを無料で見せて頂くのは申し訳ないです…。
ギャグ漫画だからうんと笑えて、それなのに時々ほろっとさせられる、この『運命と呼ばないで』の感想文を書きます。過剰なネタバレは避けたつもりですが、これから読む予定で内容を知りたくないかたは続きは読まないでください。ここでお帰りのかたに一言だけ。「ベトさん推しのかたに限らず、アニメ『クラシカロイド』好きな人ならきっと楽しく読める本ですよ!」私が補償しますから!(※私は決して回し者ではありません。)
(以下ネタバレあり)
ベートーヴェンって、孤高の天才で超偉大な人ってイメージがありません?(私だけ?)。『運命と呼ばないで』を読むとそれがいい意味で裏切られます。ベートーヴェンは「人間性がちょっと…」ではあるんですが、熱いオトコで見ていて楽しくて(おそらく本人も基本的に人生楽しんでいると思われる)、不思議な魅力がある人なんですね。そして彼の周りには彼を精神的に支える人達が何人もいて、人に好かれた人物なんだとよくわかります。
始まりは1801年のウィーン。ベートーヴェン(当時30歳)のもとに弟子入りを志願するフェルディナント・リース(当時16歳)が訪れます。この若い音楽家の卵・リースの視点で描かれる物語で、彼がフランス軍の徴兵のためウィーンを離れる1805年までの出来事が主な内容です。プロローグとして1784年のボンでの子供時代と、エピローグとして1825年の第九初演およびリースによる再演も描かれています。
主な登場人物は、上述の二人以外にベートーヴェンの弟子チェルニー、ベートーヴェンの恋人であるJK(女子貴族)ジュリエッタ、ベートーヴェンの悪友でヴァイオリニストのシュパンツィヒ、ベートーヴェンのパトロンであるリヒノフスキー侯爵、and more。え、知らない人コワイ…よっぽどのマニアでなければわからない名前が次々と出てきますが、安心して下さい。どの人物もビジュアルと性格がはっきりしていてキャラ立ちがすごいので、すぐに把握できますよ。キャラクター相関図やキャラクター・プロフィールもあるので大丈夫です。
弟子入りを許されたリースですが、汚部屋の掃除をはじめパシリとしてこき使われます(※弟子仲間のチェルニーはまだ子供です)。ベートーヴェンの悪筆のせいで写譜を徹夜でするはめになるし、先生と恋人ジュリちゃんのお部屋デートのBGM係もやらされる。シャボンまみれにされて「いやっ…らめっ…」なんてことも(※エロくないので安心して下さい)。好戦的な先生が仕掛けた、楽譜の出版をめぐる危険な交渉にも巻き込まれ…弟子兼パシリって大変だ。うまくやっていく必要があるクレメンティに対してベートーヴェンが“ツン”発動した時には、クレメンティの弟子フィールド(彼もパシリ)と意気投合し先生同士を引き合わせて、頑張っています。しかし弟子の役得で、先生とライバルとのガチンコピアノバトル(秘技楽譜返し!)を間近で見られたり、「熱情」第3楽章誕生の瞬間に立ち会ったりしているので、音楽家の修業としてはよい環境だったのでは?(※他人事だと思って…って感じですよね。リース君ゴメンね。)
基本ギャグなのでネタの取り上げ方が面白いです。リースがオバチャン聴衆を前に即興で「ズンドコマーチ」を弾いたのって、あれですよね。某若手演歌歌手の「ズン♪ズン♪ズン♪ズンドコ(き○しー!)」。かけ声は「ルイジ!(ベートーベン先生の愛称)」でしたが。チェルニーの「その謎は今、解けつつあるのかも」って、コ○ンっぽい。あと、「交響英雄ボナパルト」…「コルシカ島でキミと握手!」って(笑)、まさに戦隊ヒーローのノリです。コマの左肩に7:30から7:59と、ニチアサの時刻表示があって凝っています。他にも色々なエピソードがあるので、ぜひ本編を読んでおおいに笑いましょう、皆様。
そして、ハイリゲンシュタット…。リースは先生の机の上に遺書があるのを見つけて、師を必死で探し回ります。川の畔で先生を見つけて、そこからの二人の会話が実に良いです。遺書の内容にはお互い触れずに、ひたすら故郷ボンの話や身の上話をするんです(説明下手なのでもう本編を読んで下さい!)。リースの最後のセリフ「聞こえませんよ!」に泣き笑い。信頼関係がある師弟だからこそ、「言わなくてもわかる」部分でわかりあえたんだなと思います。いい弟子に恵まれてよかったね、ベートーヴェン先生。そうなんですよ。たとえ親兄弟や配偶者といったどんなに親しい間柄でも、絶対に踏み込んではいけない領域ってあると思うんです。『運命と呼ばないで』のハイリゲンシュタットの扱いは、まさに「ブラボー」と拍手喝采したい描き方でした。
最大の山場は、リースのデビュー演奏会におけるカデンツァ(ピアニストが一人で演奏する部分)です。事前にリースが書いたウルトラC級の難しいものを、ベートーヴェンは添削して必ず弾けるものにします。リハーサルでシュパンツィヒに「覚悟次第だな」と言われた、本番でのリースの決断は…。やっぱり本編を読んで下さい!私は不覚にも涙が出ましたから。ギャグ漫画に泣かされるとは思ってなかったよ。
漫画の合間にあるコラムは内容充実していて読み応えあります。「リース君&チェルニー君の楽屋裏トーク」ではベートーヴェンのリアルな人間性が垣間見られて楽しい。「パトロン、リヒノフスキー侯爵の勝手に萌えレクチャー」は、様々な出来事の背景を独自の視点で掘り下げ詳しく解説してくれます。なぜかオネエ言葉で話す侯爵様、なんと私と誕生日が同じでした。萌えるわぁ(※関係ないですねスミマセン)。
そして、音楽が聴きたくなる罠…。印象的な各場面には必ず音楽があります。三大ピアノソナタなど知っている曲なら脳内再生できるのですが、知らない曲もたくさんあるわけで。リースとツェルニーが連弾した曲や、リースがデビュー時に弾いたカデンツァは一体どんな曲なんだろう?と、むずむずするわけです。そこで…アニメ映像化希望!このかわいらしいキャラクター達が動き、劇伴にクラシック音楽の名曲が流れるって、最高じゃないですか!?『クラシカロイド』が盛り上がっている今、『運命と呼ばないで』を映像化するなら今でしょ?(※やや古い言い回し?)本当に期待しています!
ちなみに、本の巻末ではマンガの各場面にあわせたクラシック音楽を「妄想BGMリスト」としてまとめてあります。ベートーヴェン先生の必殺技「ギロチンチョップ」のテーマは、ご存じ交響曲第5番「運命」第一楽章(ジャジャジャジャーン!)です。あと、お散歩のときは交響曲第6番「田園」第一楽章(※『クラシカロイド』でムジーク編曲されているあの曲ですよ)。ベートーヴェンの曲だけでなく、リースやチェルニー、クレメンティやフィールドらの曲も盛り込まれています。
調べてみると「公式サウンドトラック」として音楽配信があるようです。CD等のメディアにはなっていない模様。
naxos.jp
うーむ、Amazonプライムに入会するかな?スマホもMP3プレーヤーも持っていない私が聴く手段はPCしかないのかな?むむ。
私は『クラシカロイド』にハマってからというもの「やっぱり私ベトさん好きだわ」からの、「もっとたくさん曲を聴こう。関連本も読んでみよう」となり、今に至ります。『運命と呼ばないで』に出会えたのは、やはり運命だったと言わざるをえません(笑)。読了してからの私は「今までノーマークだった弦楽四重奏曲を聴いてみたい」「さらに詳しい伝記本を読んでみたい」となっているわけですから。しかも息子(11歳)も巻き込んでますから(わはは)。『運命と呼ばないで』制作に関わるすべての皆様にお礼申し上げます。とっても楽しい作品をどうもありがとうございます!
長くなりました。最後までおつきあい頂きありがとうございました。