『クラシカロイド』第9話 闇、その向こう 感想
※2018/06/10 画像を削除しました。なお、この記事を約1年後に見直した「振り返りレビュー」もあわせてお読み下さい。以下のリンクからどうぞ。
『クラシカロイド』って本来コメディーのはずなのに、今回はシリアスです。史実ベートヴェンの難聴について誤魔化すこと無く正面から取り上げています。個人的にベートヴェンへの思い入れが強いので、私は何度観てもしんどくて胸が苦しくなってしまう回です。とは言っても25分間ずっと重苦しい話ではなく、基本はいつもの楽しい絵が展開されますからあまり身構えずにどうぞ。
それから驚くなかれ。クラシカロイドって楽器演奏するんですよ!ムジーク発動時は確かに音楽が流れますが、タクトを振ってはいてもそれはいわば「魔法少女がステッキを振って魔法をかけている」状態に近いイメージです(※あくまで私見です)。今回はベトさんがムジーク発動中にギター演奏してますからね。曲はもちろん最高!でもそれを自ら演奏することで人々を熱狂させるわけで。まさに「音楽家らしい」音楽家の生き様を、この第9話ではしっかりと見せてくれます。
今回いつもより余計に力が入りすぎていますが、できるだけ平常心で感想書きたいと思います。爺、長い…。
第9話 闇、その向こう (2017/06/04 再放送)
あらすじは公式サイトでご確認下さい。
ストーリー | アニメ「クラシカロイド」HP
♪感想(レビュー)
もちろんすべてが良い!でも、しいて私が今回の素晴らしい点を一つだけあげるなら「難聴という過去の苦悩をベト自身が一人で乗り越えた」こと。史実のベートーヴェンも「ハイリゲンシュタットの遺書」をしたためながら、自分自身で生きていく覚悟を決めたんだと私は解釈しているんです。誰にも相談しなかったし、誰かに助けて貰おうなんておそらく本人は考えていない。
わかりやすさを優先するならば、誰かが察して音羽館メンバー総動員でベトに寄り添うお話になったと思うし、その方が簡単に泣ける話を作れたはず。でもそうしなかった脚本に敬意を表したいです。誰かの同情なんてベートーヴェンは望まないと思うから。私はベトさんと歌苗ちゃんが仲良くしていると嬉しい人種ですが、今回に関して言えば歌苗ちゃんにも踏み込んで欲しくない領域なんですよ。どんなに親しい人であっても、絶対に踏み込んではいけない心の奥底にある領域。考え方は人それぞれなので、あくまで私個人の思いとして。
ただ、真っ暗になった部屋に懐中電灯を照らして入ってきたのが歌苗ちゃんだった件については拍手喝采します。本人に自覚はないけど、ベトさんの道標となる光は歌苗ちゃん。ベートーヴェンは強く求めても家族愛に恵まれない人生だったので、現世において一人の女性(歌苗ちゃん)が希望の光になるという暗示は、もう救いなんじゃないかと。
ぶっちゃけ「音楽家が難聴を乗り越える」それだけで十分泣けるので、その気になれば制作はいくらでも「サボれる」と思うんですね。でもお話を観ればわかります。サボっていることなんて何もない。とんでもない。脚本は言うまでも無く作画も劇伴ももちろんムジークも、隅から隅まで最初から最後まで本気です。私、このスタッフが創り出す物語であれば、迷わず一生ついていこうと心に決めました!そんな記念すべき回がこの第9話です。
以下は思ったことメモ。
- 部屋籠もりの先輩をギョーザーでおびき出そうとするシューベルト。だってギョーザーアニメだもんね。
- ベトの部屋から投げられた作りかけのギターが、扉を突き破ってシューの顔に激突。メガネも粉々に。不憫担当とはいえ、もうなんでこんな目にあわなきゃならないの…。
- 駅前の大画面でベトが衝撃を受けたギターの人って、布袋さんよね?
- モツ「ルー君はもうギョーザは作らないの?」ベト「ギョーザ?なんだそれは。」ギョーザーアニメあっさり終了。でも完全に忘れたわけじゃ無いから。この後もギョーザーは出てくるから、ね。
- シュー「大天才ベートーヴェンの演奏を生で聴けるということなのです!」立ち直り早い。割れたメガネも直っているし。
- 奏助、エレキギターが埃かぶってるよ。全然弾いてこなかったんだね、もったいない。
- ベトがギターを持つ姿に「おお…」と息をのんだのはシューさんですか?うん、サマになってるよね。ただ弾けないせいかきょとんとしているけど。
- ベト「たとえ愚かな未熟者に教えを請うことになるとしても。」うん、その一言いらない(笑)。
- 奏助とパッド君によるギターレッスン。チョッちゃん笑いすぎ。
- モツがシューの頭にクワガタをくっつけるイタズラ。意味を問うなクラシカロイドだもの(笑)。
- ギター改造第一弾、どうしても火力が必須らしい。「モンスター」ってネーミングも厨二病的でアレ。ブレーカー落とすレベルの電力消費って一体…。
- 過去の記憶、つらい。白黒画面にこぼれたワインの赤…ドキっとさせられます。トカイワインに含まれる鉛中毒が難聴の一因とも言われていますね。
- 演奏禁止に、ぐあってなったベト。翌日リビングのソファで物思いにふけっていたのは、演奏禁止よりも過去の記憶についてだったのね。でもそれを周囲にぺらぺら話したりしないのが彼らしい。
- 奏助、掲示ポスターを破って持ち帰るのはいかんでしょ。せめてパッド君で撮影しようよ。
- ギター改造第二弾、どうしてこうなった!?演奏できる代物なのかが心配になる外観ですが、演奏は問題ないあたりがクラシカロイド達は天才音楽家なんだなと。
- また駅前に来てしまうベト。胸のあたりを抑える手が切ない。感傷的な気分になると確かにそのあたりが苦しくなるよね。真っ暗な夜空に星が一つ見えたのは希望の光という理解でOK?
- コンテスト当日、本人が現われないのはやきもきするね。間に合ってよかった。「集中する。一人にしてくれ」が、人知れず努力してきたことをうかがわせます。館は演奏禁止だったから、どこかで練習したのかな?でもどこで?
- いざ、演奏開始したらバッハの指示でブレーカー落とされて停電。この演出は良いなあ。ただ、ほんの少しだけ演奏した曲がもったいない。おそらくこの曲を最後まで演奏してもベトは優勝出来たよ。
- (ムジーク発動中については後述します)。
- 「過去は過去。今は今。俺はまだ生まれたばかりだ」。カッコイイカッコ良すぎる!そうですとも。人生、まだこれからだから。
- 優勝賞品のクロッキーを「おまえのひたむきさのおかげで光が見えた」お礼としてストリートミュージシャンにあげちゃった。あの、大変無粋で申し訳ないのですが、そのギターを売ってお家賃にするというのはいかがでしょう?カッコつかないからダメか…。
- 「音楽に必要なのは楽器でも技術でも無い」。カッコイイカッコ良すぎる!(2回目)
- 奏助「要するに才能っすね!」いや才能だけでもないと思うよオバサンは。必要なものが何なのか気付くことができる力が「才能」なのかもね。
- わ、シューさん材木調達に海外へ?!今回も先輩のムジーク聴けなくて不憫極まりないです。その材木をせめて今後に活かして頂きたい。何か作ろう、ね。
♪ムジーク
六弦の怪物 ~クロイツェルより~
アーティスト:布袋寅泰(Vocal:浦井健治)
作詞:森雪之丞 作曲:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 編曲:布袋寅泰
♪ムジーク効果(私見)
ホール全体と聴衆をすべて中世風に変化させ、熱狂的な演奏会にする。手持ちのタクトをギターに変えた上で、演奏はベト自身でおこなっていますね?(※これは断言できません)。パッド君まで中世風のカツラの装いになったのに、バッハには効かなかった様子。
♪挿入歌
Koe
作詞:リディ・ハドソン、加藤哉子 作曲:リディ・ハドソン 編曲:山本英武 歌:リディ・ハドソン
ストリートミュージシャンが弾き語りしていた曲です。ムジークではないけれど、良い曲ですね。ムジコレにはフルで、サントラにはTVサイズで収録されています。
♪今回(第9話)のマイベスト・ベト(特別編)
最初から最後までベトさんが良すぎる回なので、どうしよう。やはりムジーク発動時で!台詞がもう神がかっているので書き起こしますね。でもって今回はいつもより枚数多いよ。仕方が無いよ!
「いや、まだだ。演奏は叶わずとも曲を作り、世に残す事はできる。作曲家として新たな道を踏み出すのだ。演奏者としての栄光を捨てて。」
ベートーヴェンは難聴になる前は即興演奏の名手として有名だったので、相当つらい決断だったはず。しかしだからこそ私たちはベートーヴェンの名曲の数々を聴くことができるわけですが。
「俺の中で騒ぐ『何か』…胸のざわめきは、はるか昔、暗闇のかなたに葬った未来…か。」
掴んだ。
そして覚醒!
(ムジーク口上と変身シーンも入れたいけど割愛。)
「新たなる道を照らす調べは、我が魂!」
タクト投げる手がまた良い!
演奏中のベト、カッコイイカッコ良すぎる!(n回目) 切り取ったカットじゃなくて動画で載せたいレベル。
「我はこの旋律をもって、暗闇をこじ開け、沈黙を切り裂く。抗うための剣は既に、我が手にあったのだ!」
ここのベトの声がまたいいんだわ。完全に過去と決別したのよね。
♪今回(第9話)のベト歌
ベ「弾きたいものは弾きたいのだ!」歌「子供じゃないんだから…。」
今回も夫婦漫才、ありがとうございます!
「もう!おかげで真っ暗じゃないの!」
ベトが過去の記憶から引き戻されたのが、歌苗の声と懐中電灯の光だったのが本当に素晴らしい。
「ああ…ならこれでどうだ。」
この声が好きです。停電前の荒ぶった感じではなく、どこか切ない(※語弊があるやも知れませぬ)。ベトは自分が苦しんでいるはずなのに、周りに気を遣わせないふるまいをするんですよね。
ムジーク時のクラシカル歌苗がカワイイ。似合う衣装を着せるなんてさすが。
- アーティスト: オムニバス(クラシック),フィッシャー=ディースカウ(ディートリヒ),シューベルト,ムーア(ジェラルド),ヘルトナーゲル(ゲオルク)
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2017/02/22
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
「ヴァイオリンソナタ第9番(クロイツェル)」は原曲もカッコイイ。原曲集2に第一楽章が収録されています。
「六弦の怪物」はムジコレのフルサイズをぜひ聴いて下さい。TVサイズにはない間奏部分のギターがすごいです布袋さん!
サントラの「Monster No.28」は必聴。こんな良い曲をさわりだけしか使わないなんて贅沢…。ざっくりレビュー記事もあわせてどうぞ。
※この記事は「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c