アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ

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『孤独な放浪者 シューベルト物語』ひのまどか(著) 読みました

今回はマンガじゃありません!『孤独な放浪者 シューベルト物語』を紹介します。図書館で見つけた本です。「小学校上級以上向け」とあり、児童書の棚に置いてありました。

孤独な放浪者―シューベルト物語 (1983年)

孤独な放浪者―シューベルト物語 (1983年)

 

 もしかするとこの本は絶版なのかも?ネットで見ると中古本の価格が上がっているのですが、おそらく多くの図書館に置いてあるのではないでしょうか。著者のひのまどかさんは他の音楽家(バッハ、ベートーヴェン他)の伝記も執筆されており、同じリブリオ出版から出版されています。少しずつ読んでいきたいです。

伝記でネタバレはあまり気にしなくてもいいですか…?しかし内容に触れる部分は念のため畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。

(以下ネタバレあり)

 児童向けとはいえ大人でも読み応えがある内容です。活字の小ささと本の厚みだけで息子(小6)が敬遠してしまったのは残念…。でもただ出来事をつらつら並べる退屈な形式ではなく、場面展開や登場人物の会話で物語が進むので、話に引き込まれて面白く読むことができます。なので小学校高学年くらいから読めるのでは。ただ、ややぼかしてはあるものの性病の話も出てきますので、読める年齢には個人差があるかもしれません。

シューベルトが尊敬してやまないベートーヴェンがよく登場します。本を開いてすぐツカミ(プロローグ)から、ベートーヴェンの甥カールに手を引かれて巨匠に会いに行こうとするのに、結局尻込みして会わなかった話です。シューベルトベートーヴェンに献呈した「フランス民謡による四手用変奏曲」への反応を、店の窓の外から見て満足しているような内気な人。12歳のときにベートーヴェン交響曲第二番に出会って以来、17歳で教科書を売り払い「フィデリオ」初演のチケットを買っていますし、甥カールと知り合ってからはベートーヴェンのことを根掘り葉掘り聞いています。後をつけたり、いきつけの店や出版社に先まわりして遠くから見ていたりと、まるでストーカーです(苦笑)。こんなにもあこがれていて、会おうと思えば会うチャンスはあったのに、結局会ったのはベートーヴェンの死の間際の一度きり。ベートーヴェンは死の床でシューベルトの歌曲に触れ「この若い作曲家の中には、神の火花が散っている!」と評したのですから、本当にもっと早くに知り合えていたらよかったのに、と悔やまれます。松明を持ってベートーヴェンの葬儀に参列したシューベルトは、その一年あまり後に「ここにはベートーヴェンがいない!」と言って世を去ります。本人の望み通りにベートーヴェンの墓の隣に埋葬されました。まさに事実は小説より奇なり。

貧しい上に世渡りが下手なシューベルトは、しかし多くの友人に恵まれます。安定した教職を望む父親に勘当され家を出た彼は、友人の家を転々とし食事や五線譜等を提供してもらい、作曲しながら自由に暮らす…本当の意味での自由人だったのでは?貴族のパトロンがいない上に生前はさほど売れていなかったシューベルトが、短い生涯の中で多くの作品を残すことができたのは、彼を支えた「シューベルティアーデ」の存在が大きかったのだなとしみじみ。グループのリーダー的存在のシュパウンは、リート集に手紙を添えて詩人ゲーテに送ったにもかかわらず受け取り拒否された際には「恥ずべきはゲーテの方だ!」と本気で怒っています。大歌手フォーグルは音楽面での知識を授けただけでなく、世渡りの秘訣も伝授しますし、人脈を活かした売り込みもします。なので、私タイトルにある「孤独」が正直あまりピンとこなかったです。本文でも触れられていた「冬の旅」を聴きこめばわかるのかも…?でも今はまだわかった気になるのはやめておきます。

多くの友人に恵まれたシューベルトですが、女性関係は厳しかったようです。故郷で結婚の約束をしていたテレーゼは、何年も待たせた末に彼女が別の人と結婚したことで破局。そして、ハンガリーエステルハージ伯爵家で住み込みの音楽教師をしていた際に小間使いの下女と関係を持ったことが、発病のきっかけとなります。当時の性事情は詳しくわからないのですが、よくあることだったのでは?それでも病院のベッドの上でも作曲を続けるのですから、作曲にかける情熱はやはり凡人にはうかがい知ることの出来ないものなのでしょう。

生前は少しは売れても、楽譜は出版社から買いたたかれ、日の目を見ることは少なかったシューベルトの作品。シューベルトの死後にまずはシューマンが発掘し、メンデルスゾーンにリスト、ブラームスが世に広めたことで有名になったということも触れられていました。著者による現地でのゆかりの地めぐりや音楽家へのインタビューも掲載されており、盛りだくさんな内容です。ここまで詳しい伝記は初めて読みました。

我が家では子供達とよく図書館に行くのですが、音楽家の伝記は色々あって読み比べるのも面白いです。ちなみに、息子と二人で読んだシューベルトの伝記は以下の二つ。いずれも図書館で借りました。

 こちらのマンガは出版年こそ新しいですが、中身は私は小学生の頃にも読んだことがあります。学研マンガでおなじみ、よこたとくおさんの絵です。同じシリーズのベートーヴェンとセットで読むのがおすすめ。内容は、今回紹介したひのまどかさんの著書と似ている印象です。参考文献に入っているのかも?

 

 こちらは活字の本ですが、内容が易しく活字も大きめなので小学校中学年程度から読めるのではないでしょうか(あくまで私見です)。ベートーヴェンと会ったのが死の間際だけでなく、それより前にあと一度(楽譜を見てもらい、一箇所直される)あるのが印象に残っています。実際はどうだったんでしょうね。

それにしても。サリエリシューベルトに「君の音楽はモーツァルトのモノマネに過ぎない」と言ったエピソードはどの本にもありませんでした。このソースは一体どこ?そもそも本当の話なの?モヤモヤします。

また私見ですが、シューベルトの曲ってベートーヴェンの曲とは似てないような気がします。私の気のせい?畏敬の念を抱いてはいたけれどそれはそれとして、シューベルトは彼自身の世界観がしっかりあり、誰のマネでもない作品を生み出した人なのかもしれませんね。私、シューベルトの曲は超有名な歌曲(魔王や野バラ、子守歌、ます等)以外は恥ずかしながら全然聴いてこなかったので、これから少しずつ聴いてみようと思います。

また長くなりました。最後までおつきあい頂きありがとうございました。