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「名探偵コナン推理ファイル 音楽の謎」(小学館) ざっくりレビュー

 

名探偵コナン推理ファイル 音楽の謎 (小学館学習まんがシリーズ)

名探偵コナン推理ファイル 音楽の謎 (小学館学習まんがシリーズ)

 

 今回は児童書の「名探偵コナン推理ファイル 音楽の謎」(原作/青山剛昌 シナリオ/平良隆久 まんが/阿部ゆたか・丸伝次郎)を紹介します。図書館で息子が選んだ本です。小学館から出ている同シリーズのラインナップをざっと確認しましたが、音楽関連の本は本書のみのようです。

www.shogakukan.co.jp

内容に触れる部分は念のため畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。

 (以下ネタバレあり)

これは良書です。1000円でお釣りが来る価格なので、いずれ購入する候補に入れます。子供向けですが、内容がとても充実していて大人の私でも知らない音楽に関連する知識が盛りだくさん。重要な本文はマンガではなくあくまで文章で書かれています。同じ学習マンガでも学研のものはマンガが主体で足りない分を欄外の「まめちしき」や末尾の解説で補う形式がメインですが、この小学館の本はいわば「解説」が主体のような形です。内容は多岐にわたるものの、極端に細かすぎることはなく基本は見開きに1つのテーマで掴みやすい。活字は小さめですが、漢字にはすべてルビがふってあるので小学校中学年くらいから読めるのではないでしょうか。

まんが「名探偵コナン」以外では、大きく3つのパートに分けられます。巻頭カラー『さまざまな「音楽のカタチ」』、『音楽の謎①』、『音楽の謎②』。巻末には音楽史略年表があり、「音楽のできごと」と世界史での出来事を並べて書いてあるのと同時に、著名な音楽家が生没年にあわせた帯で書かれていて、どの作曲家がどんな時代に生きたかが一目でわかるようになっています。

巻頭カラー『さまざまな「音楽のカタチ」』では、オーケストラやオペラ、バレエやミュージカルなどが、写真を中心に紹介されています。

最もボリュームがあるのが『音楽の謎①』で、いわゆるクラシック音楽の歴史や西洋音楽のジャンル、楽器等が取り上げられています。歴史は古代メソポタミア・エジプトから現代音楽まで。有名な音楽家は多数出てきますが、伝記的な要素はあまりなく、あくまで音楽史の中でどの位置づけにあるか?といったカタチ。例えば「標題音楽」リストやベルリオーズ、対する「絶対音楽ブラームス、といった扱いです。ロマン派音楽家の相関図はハンス・フォン・ビューローやフリードリッヒ・ビークも登場しており、かなり詳しいと思います。古典派で取り上げられた「ピアノとチェンバロの違い」は図解付きでわかりやすい。「ソナタ形式」とは「提示部・展開部・再現部」…んん?読んでもよくわからなかったので今後の課題とします。オーケストラの全体図に加え、各楽器の解説も。「木管楽器金管楽器の違いはリードの有無、ただしフルートはノンリード楽器として木管楽器に属する」そうです。ためになるなあ。他にもさまざまなテーマがありいずれも面白かったので、気になるかたはぜひご一読ください。章の最後で半ページ使ったコラム「記譜法のはじまり」は、本当にさわりだけなので、詳しく知るためには他の本をあたったほうがよさそうです。

『音楽の謎②』は、①の枠から外れるものを詳しく。「日本音楽」の歴史や楽器、能・歌舞伎・浄瑠璃については、日本人としてここで概要を知ることが出来てよかったです。あまり体系的に学んだことがなかったので…。明治以降の音楽教育から現代の作曲家に至るまでの解説は、武満徹芥川也寸志まで登場する詳しさです。アメリカの音楽は黒人系と白人の大衆音楽とがあって、それぞれの流れに加え、融合して現在のロックにつながっていることが書かれていました。でもここはもしかすると少し乱暴な色分けかもしれません。他、ラテン音楽やアジア、インド、アラブとアフリカの各地にある音楽を地図を用いて紹介してあり、「京劇」については半ページ使った解説がありました。録音と再生の歴史は、エジソンの蓄音機にはじまり、現在のデジタルオーディオプレーヤーと音楽配信まで。章の最後、見開きのコラム「音楽の記号一覧」は、基本は抑えているもののやはりこれだけでは足りないので、別の機会に詳しく勉強したいです。

コナン君が活躍するマンガは2本でそれぞれ25ページ。1つはベートーヴェンの鉛中毒がキーとなる殺人未遂事件、もう1つは童謡「シャボン玉」をヒントにした子供の失踪事件。子供が読んで楽しめるマンガではありますが、ぶっちゃけマンガはいらないかも。ただ、子供達に本を手にしてもらうための呼び水にはなっていると思います。息子もこれがなければ手に取らなかったかもしれません。でもね、本書に関して言えばマンガはオマケ。マンガしか読まないのはもったいなさすぎ。ちなみに息子は字のページも最初から最後まで読みましたよ。本文は読みやすい上にレイアウトや挿絵・コラム等で飽きない工夫がされているので、楽しく読むことができたようです。大人の私は、巻末の「主要参考文献」(※数が多いです)のコピーをとったので、それらを今後機会を見つけて少しずつ読んでいきたいと思います。

今回も最後までおつきあい頂きありがとうございました。