『教科書にでてくる 音楽家の伝記』(講談社) ざっくりレビュー
子供向けの音楽家の伝記本。2017年1月に第1刷が出た、比較的新しい本です。例によって図書館で借りてきました。リブリオ出版の音楽家の伝記シリーズでおなじみ「ひのまどか」さんが監修しています。前書きもひのまどかさん。
登場人物があまりにも多いので、個別の音楽家を掘り下げることはせず全体の印象をざっくり紹介したいと思います。今回は長くはしない予定です。
例によって内容に触れる部分は念のため畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。
(以下ネタバレあり)
大きな活字で、漢字にはルビがあり、美しい挿絵とともにやさしい物語を楽しめる本です。小学校低学年くらいから子供が自分で読める本なのでは?お話が駆け足なのは否めないですが、それぞれきちんとポイントをおさえています。この本をきっかけにして、興味を持った音楽家についてはもっと詳しい伝記本を読んでみるという展開になるといいですね。
章を設けて取り上げている音楽家は以下の通りです(掲載順)。
ベートーヴェン
モーツァルト
バッハ
ヴィヴァルディ
シューベルト
メンデルスゾーン
ショパン
シューマン
リスト
ワーグナー
ヴェルディ
スメタナ
ブラームス
チャイコフスキー
ドヴォルザーク
プッチーニ
ドビュッシー
ラフマニノフ
また、半ページ使って簡単な解説がある音楽家は以下の通り。
ハイドン/ロッシーニ/ヨハン・シュトラウス2世/ラヴェル/ガーシュウィン/滝廉太郎/山田耕筰
他、「音楽の世界で活躍した女性たち」として、クララ・シューマン、ファニー・メンデルスゾーン=ヘンデル、セシル・シャミナード。「世界で活躍する日本の音楽家」として、小澤征爾、久石譲、辻井伸行、がそれぞれ簡単に紹介されています。
一人で一冊の伝記本は人選が限られているので、これだけ多くの音楽家を知ることができるのは良いと思います。そして、なんだかんだでクラシック音楽はさわりだけは耳にすることは多いので、例えば街中やテレビ等で印象に残った曲をどんな人が作ったのかを知っていると、その曲に親近感がわきそう。そして、この本は解説が充実しています。各音楽家の物語の後には、活字が小さめの半ページの解説が必ずあり、その人の仕事をざっくり知るにはじゅうぶんな内容です。あとはコラムとして「オーケストラのひみつ」「楽譜の種類」他、大人の私もよく知らないことが色々と載っていて、この解説とコラムのためにこの本を買ってもいいかなと思えます。小さなお子さんだけでなく、大人の方もご一読をおすすめします。
比較的小さな子も対象としているためか、本文は毒を極力取り除いているような印象です。女性関係が派手だったリスト、ワーグナー、ドビュッシーあたりは、不倫関係のお話は一切出てきません。リストにマリー・ダグー伯爵夫人、ワーグナーにコジマがいないのは、彼女たちの功績を考えるとやや不自然かも。カロリーヌやミンナは出てくるのに…。ちなみに、ショパンにはジュルジュ・サンドが登場します。恋多き男だったベートーヴェンに関しては、ヨゼフィーネとその姉テレーゼが登場。ブラームスではクララ・シューマンがしっかり描かれていました。あとは細かいところで、ベートーヴェンが父親からスパルタ教育を受けても逃げなかったことを「音楽が好きでたまらなかったからです」…こんなんで片付けていいんでしょうか?DVを肯定することにつながりませんか?ブラームスが13歳くらいから酒場でピアノ弾きのバイトをしていたことも「きいてくれる人がいなくても、ろくにお金をもらえなくても、ひいていればしあわせでした」…きれいごとだわ。彼は演奏の合間にハイネの詩集を開いて、遠くに聞こえる嬌声をやりすごしたらしいですよ。重箱の隅突きはこれくらいで。でも子供は案外こういった部分を覚えていたりするので、小さな子であれば親御さんがフォローしてあげてください。
では今回はこの辺で。最後までおつきあい頂きありがとうございました。