アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ

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『人はみな草のごとく ブラームス物語』ひのまどか(著) 読みました

 

ブラームス―人はみな草のごとく (作曲家の物語シリーズ (7))

ブラームス―人はみな草のごとく (作曲家の物語シリーズ (7))

 

 ひのまどかさんによる音楽家の伝記シリーズの中から今回は『人はみな草のごとく ブラームス物語』を紹介します。こちらも図書館で見つけた本で、実はシューベルトの本と同時に借りて一度読んでいました。今回改めて読み直した上で紹介文を書いています。『孤独な放浪者 シューベルト物語』の紹介記事のリンクも貼っておきますね。

nyaon-c.hatenablog.com
また、こちらも過去記事ですが、伝記マンガの感想記事もリンク貼ります。8巻分のレビューをまとめて一つの記事にしていますので分量が多いです。ブラームスは後ろから2番目、すぐ手前のシューマンもあわせてどうぞ。

nyaon-c.hatenablog.com

なぜ今ブラームス?『クラシカロイド』2期の追加キャラはワーグナードヴォルザークでしょ?はい、そうなんです。2期追加キャラではないので、記事にするのは見送ろうかとも思ったのですがせっかくなので書くことにしました。しかしブラームスはバッハ、ベートーヴェンと並ぶドイツ三大Bであり、ワーグナードヴォルザークとも縁のある人物なんですよ。ですので、たとえ『クラシカロイド』に今後ブラームスが登場しないとしても(個人的にはぜひ出てきて欲しいですが)、知っておいて損はないと思われます。いえ今後出てきますよきっと!(※往生際が悪い!

なお、ひのまどかさんの伝記シリーズにはワーグナードヴォルジャーク(こちらのみ著者は黒沼ユリ子さん)もあるので、それらもいずれ読む予定です。ベートーヴェンは既に読みました(※記事はそのうちに)。

それにしても、ひのまどかさんは音楽家の伝記を本当にたくさん書かれていますね。私が読んだのはほんの数冊ですが、すでにこのシリーズのファンになっています。丁寧な取材をもとにしてありますし、読み物としてもとても面白いんですよ。資料写真も大変充実しています。少し古い記事ですが新聞記事を見つけたのでリンクを貼っておきます。約30年で20巻!

www.asahi.com

伝記ですのでネタバレは気にならないレベルかと思われます。しかし内容に触れる部分は念のため畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。

 (以下ネタバレあり)

これは良い純愛物語…。クララ・シューマンへのプラトニック・ラブがかなり大きな比重を占めていて、下手な恋愛小説を読むよりずっと夢中になれました。ただ、恋のインパクトが強すぎてある意味もったいない。他の重要な仕事や交友関係、彼自身の生い立ちや性格についても書かれてはあるものの、ちょっと駆け足かなという印象です。なおタイトルの「人はみな草のごとく」は「ドイツ・レクイエム」の聖書の言葉から来ています。

プロローグはリストの館にて。大御所リストの演奏中に考え事をしていたブラームスが、居眠りをしていると誤解されリストの逆鱗に触れる有名な場面から。リストの手助けがあればメジャーデビューは可能なのに、どうしてもリストの考え方や音楽が合わないと感じた無名時代(当時20歳)。故郷で知り合ったバイオリニスト・レメーニと二人で演奏旅行中の出来事で、これが原因でレメーニとケンカ別れしています。ひのまどかさんの伝記は、この導入部分が本当に面白いです。世界観にぐっと引き込まれて、早く続きが読みたくなります。

リスト事件の後、しばらくしてシューマン家を訪れるわけですが、ここではあっという間に家族になじんでしまいます。シューマンの後押しで作品の出版まで話が進み、幸先良いです。ただ、シューマンが音楽雑誌でブラームスのことをベタ褒めして、それがブラームスの重荷に。どこに行っても色メガネで見られてしまうのですが、演奏や作曲で結果を出せるのはやはり非凡な証拠。そうして始まった音楽家人生も、シューマンの自殺未遂から亡くなるまでの2年半はほぼ空白期間となります。自分の活動はそっちのけで、クララとその子供達を支えることに全力を注ぐ。この時期は音楽家らしい活動は少ないのに、恋愛小説として読む分には超絶面白いです。ブラームスがクララ宛てに書く手紙は「敬愛する奥様」からいつの間にか「愛するクララ」になって、好きの気持ちが抑えきれない。ただ、35歳のクララのほうは彼の気持ちに気付いてもあくまで「真の友情」として捉え、一線は越えない。またブリキのおもちゃで遊ぶ21歳のブラームスを幼いと感じていたようです。

生涯独身だったブラームス。クララとは結婚しなかったものの、手紙のやりとりや夏の避暑地は同じ場所で過ごす等、友情は続きます。作品を最初にクララに批評してもらうことを生涯続けていますし、クララの死後は抜け殻状態になって一年経たずに後を追うように亡くなっています。ちなみに他にも恋はしていて、本書に出てきたのは結婚寸前までいったアガーテに、シューマン家の三女ユーリエ。ただ、歌手ヘルミーネはじめ恋バナはもっとあるはずなんですが、本書では取り上げられていません。子供好きで、散歩に出るときはポケットにたくさんお菓子を詰め込んで子供達に配っていたブラームス。結婚して子宝に恵まれたならまた違う人生を歩んでいたはず。たらればの話はしても仕方のないことですが。

ブラームスは社交的では無い上に皮肉屋でもあったことから敵が多かったものの、一方で交友関係はかなり恵まれていたようです。一部を紹介するだけでも、生涯にわたり何かと支えとなってくれたバイオリニスト・ヨアヒム。「ドイツ三大B」「ベートーヴェン交響曲第十番」といった名言を残した指揮者・ビューロー。ワルツ王・ヨハンシュトラウス二世、and more。しかし、大ゲンカして絶交する(たいてい数年後によりを戻す)こともしばしばで、「自由にだが孤独に」の座右の銘を地でいっています。ちなみに、無名のドヴォルザークに才能を見いだして支援したエピソードはごくさらっと済ませてありました。これはドヴォルザークの伝記の方で補完したいと思います。

実家の両親(母は父の17歳年上!)の不仲に悩まされ、故郷ハンブルグの音楽界からは無視され続け、といった苦悩はあるものの、ブラームスは音楽家の人生としては勝ち組(こんな表現は良くないかもしれませんが)なんだと思います。自分に厳しい人で、若い頃の作品はほとんど自分で破棄してしまったり、曲は何度も手直しを加えた上で仕上げたり。作曲以外の芸術監督といった仕事にも全力を尽くす真面目な性格です。どんなに売れっ子になっても質素な生活を好んだので、お金は貯まる一方。そのあたりは派手好きで借金まみれだったワーグナーとは異なるわけですが。ただ、ワーグナー嫌いの評論家・ハンスリックの陣頭指揮でワーグナー派との対立に担がれたものの、当の本人はワーグナーをさほど敵対視していなかったようです。ワーグナー派とされる作曲家・ブルックナーと、いきつけの料理屋「赤いはりねずみ」でお互い目礼を交わしているエピソードも。

胸に永遠のロマンを秘め、男性的な力強さと優しさの両方がある。思慮深いことから寡黙になり、頑固だと周りから誤解されようともブレない。まやかしは嫌いで真実を追究する。時々大ゲンカはするけれど、親しい友人が大勢いたのはやはりその正直な人間性によるものだと思います。困ったな、私ブラームスが好きかもしれない。楽曲はあまり知らないけれど。

私のクラシック音楽の記憶はほぼそのまま昔の父の趣味になります。好んでかけていたレコードの八割はベートーヴェンでしたがワーグナードヴォルザークブラームスも時々聴いていました。印象に残っているのは、ハンガリー舞曲集(管弦楽版)です。有名な五番はもちろんイイけれど一番の頭も良いですよ。元々はピアノ連弾の曲だったと最近知りました。あと好きなのは「子守歌」や「愛のワルツ」で、後者はEテレの番組「2355」のトピーコーナーで使われていますね。彼の本領発揮であろう交響曲や「ドイツ・レクイエム」等は、恥ずかしながら私にはまだ良さがわからないです。他の曲も含めこれから少しずつ聴いてみて、本質に近づく努力をしてみようと思います。また機会があれば書簡集や他の伝記本も読んでみたいです。

あーやっぱりハンガリー舞曲のムジークを聴いてみたいよ。ブラームスは『クラシカロイド』2期のサプライズなんでしょ?大トリなんでしょ?ドイツ三大Bで一人だけ仲間はずれなんてひどいし、2期後半で必ず登場してください。お願いします!(※もう恥も外聞もない…。)

また長くなりました。最後までおつきあい頂きありがとうございました。